2020年5月25日月曜日

令和2年5月25日

[著作権法改正への思い]

 今日5月25日、緊急事態宣言が全国で解除される見通しです。医療従事者をはじめ、収束に向かって尽力された皆様、様々な自粛要請などにご協力いただいた国民の皆様に心から感謝申し上げます。

 しかし油断するといつまた新型コロナウイルスの第2・第3波が来るかわかりません。引き続き感染防止に配慮した新たな生活をお願いするとともに、資金繰りの支援をはじめ今後の本格的な経済活動や医療体制の充実、地方創生臨時交付金の拡充などに向けて、大胆な内容の第二次補正予算の迅速な編成に向けて与党として全力を傾けます。また、既に成立している第一次補正予算の迅速な執行を求めていきます。

 そのような中、22日の衆議院文部科学委員会で、違法DL(ダウンロード)規制を映画・音楽以外の著作物に拡大することなどを内容とする著作権法改正案が可決されました。

 本改正案は、漫画村などの海賊版サイトにより、クリエイターやコンテンツ産業に深刻な損害が広がっていることから、私が文部科学大臣の際、通常国会への提出を目指していました。
 サイトブロッキングといった強力な手段については憲法に規定された表現の自由との関係で問題があるとのことで、より制限の緩やかな、海賊版サイトへの誘導を行うリーチサイトへの規制とともに違法DLを処罰する案を採用することを当時の平井IT大臣・石田総務大臣と合意したのです。

 表現の自由に配慮し、違法DL規制についても厳格な要件を設けていたのですが、「普通のスクリーンショットまで処罰される」「パロディーまで禁じられるのか」等の誤解が生じ、ツイッターなどで反対論の大合唱。本来後押ししてくれるはずの日本漫画家協会からも反対意見が出て、このままでは国会審議が紛糾すると官邸が判断。当時の西村官房副長官は私に「違法DL規制だけ落とした法案にしたらどうか」と提案されました。

 私は即座に首を横に振りました。あくまでリーチサイト規制と違法DL規制はパッケージで実施しなければ実効性がないと考えていたからであり、労働基準法改正が高度プロフェッショナル制度と裁量労働制をセットで導入しようとして国会が紛糾し、裁量労働制に関する部分を削除した結果本来の改正から遠ざかってしまっていることの轍を踏んではいけないと思ったからです。

 「もっと議論が必要というならリーチサイト規制とセットで全部出し直してもらって結構です。」と申し上げ、結局当該法案は自民党の総務会で出し直しが指示されることとなったのです。

 尽力してきた文部科学省の皆さんには申し訳ないことをしたのですが、一旦引っ込めて再度利害関係者や有識者に議論をしてもらえばこの改正が急務を要する状況下必ず再提出の機運が盛り上がると確信していました。
 大臣退任後もこの分野に造詣の深い山田太郎議員たちと自民党で慎重に議論をし、誤解が生じないような修文もして今国会に再度法案が提出されました。野党議員の一部から「故意犯処罰の原則から言えば重過失排除の修文はかえって誤解を招くのでないか」とのご指摘までありましたが、おかげさまで22日の委員会採決は全会一致で可決。参考人質疑でも法案に高評価をいただき感無量です。引き続き本会議での採決を待ちます。

 あの騒動を思うと、ネット世論について色々考えさせられるとともに、やはり政策決定はプロセスが大切なのだということを痛感しています。もちろん、法運営の誤りなきチェックも必要です。しっかりこれからの活動に生かして参ります。

2020年5月4日月曜日

令和2年5月4日

[アフターコロナの前にウィズコロナ戦略を]

 対象地域が日本全国となった緊急事態宣言は、5月末まで延長される見通しとなりました。

 世界の感染者は、米国の110万人超を筆頭に実に344万人以上に達しています。死者は24万人を超え、先月のこの欄を見ても短期間の間に恐ろしい感染爆発が生じていることがわかります。

 4月29日に出演したインターネット番組で申し上げたとおり、日本はこの間、かろうじて感染爆発を抑えてきた感があるものの、諸外国に比べて低い検査率、陽性率が初期より上がっていることなどを考えると、感染者数は公式発表よりかなり多く、それが自宅待機中に亡くなるなどの事例の増加につながっていると感じます。

 PCR検査の拡大が目標に比べてなかなか進んでこなかったのは、専門性のある検査体制が整っていなかったことと医療崩壊を恐れていたことが理由とされています。
 医師会のご協力により、地域外来・検査センターが設けられ、PCR検査体制が増強される動きが各地で広がっています。国からも助成や防護服の確保などのバックアップをしっかり進めます。
 また、PCR検査判明まで患者が待機したり、これまで自宅療養とされてきた軽中度症状の方々が入所したりするための宿泊施設の借上げを加速します。国からもようやく自宅待機より施設入所が優先されるとの方針発表がありましたが、私も自民党埼玉県連会長として、3月末に診療を終了したさいたま市立病院の旧病棟の活用を県に訴えかけ、現在手続が進んでいます。

 また、上記番組では、さらに感染者数が少ないからといって一部地域を除外するとそこに人が移動してしまうとの懸念を示しました。全国一律の規制をすべきと主張したわけではなく、地域に応じた規制を持続可能な形でかけていくという趣旨です。学校の再開の方法などもまさに地域の実情に応じて判断されるべきと考えており、文科省には的確な判断基準を示して欲しいと考えています。

 そのような中で浮上してきたのが「9月入学問題」です。

 これ以上学校の再開が遅くなるようだと、むしろ9月を入学・始業の時期と後ろ倒しすべきだという考え方で、知事会や一部有識者から主張されました。

 私自身は世界で例の多い9月入学を採用することは留学促進の観点からも悪いことではないと思っていますが、事はそう簡単ではありません。

 まず、自治体自身が会計年度も採用も4月からとしており、多くの民間企業も同じです。それを変える覚悟と国民的理解が得られるかです。
 保育園・幼稚園は卒園を半年遅らせると負担が増え、医療系の学生が社会に出るのが半年遅れることが現場でどのような影響をもたらすかの問題もあります。必要な法改正も多岐にわたります。
 何よりも現在、在宅でもオンライン学習を拡大するなど、GIGAスクール構想をはじめとした学びの質の向上をスピードアップする動きがこれで頓挫するのでないかという懸念があります。
 学校の再開がさらに遅れた場合はどうするのか、一年遅れたらまた元どおりとなるのでしょうか。

 かつて9月入学は何度も議論されてきましたが、日本に根付いた社会・経済の壁に阻まれてきました。今回の9月入学が、改革推進でなく改革後退の便法とならないことを切に願います。また、私も党であるべき検討を働きかけていきます。

 学校の問題でいえば、家計急変やアルバイト収入が途絶えた学生の窮状をどう救うかも極めて重要です。
 文科省は授業料延納・減免を各大学に働きかけるとともに、私が大臣時代に制度化したこの4月から始まる高等教育無償化策を、家計急変学生や在学生にも広げる方針を示しています。また、各大学独自の奨学金についても家計急変学生について国がバックアップする方針を示しています。
 自民党はこれに加えて、学生の家賃の問題解決や学校間格差是正、雇用調整助成金や小口融資など他の制度の周知も萩生田大臣に働きかけました。

 前回のこの欄で紹介した経済対策は、所得減少家庭への30万円の給付が閣議決定後に全国民一律10万円の支給と変更になりました。経済・社会の状況変化や、与党内調整などでこうした方針転換が生じたことは理解できます。しかし対象者が一気に増えたからといって支給が遅れては何の意味もありません。マイナンバーカードを活用したオンライン申請の普及や、必要書類・押印の削減など、効率化を徹底して欲しいと思います。

 これに限らず、雇用調整助成金の支給やつなぎ融資などをスピードアップするための具体的な改革に取り組みます。
 また、これまでは「収束までは自粛」「アフターコロナはV字回復」の経済対策を想定して来ましたが、これからは「きめ細かなウィズコロナの経済・社会戦略」を立案しないと、社会が疲弊してしまうと思います。テレワークやオンライン診療の普及、株主総会オンライン化、テイクアウトの普及などは検討されてきましたが、さらなるICT社会の推進や、都市集中モデルから地方分散モデルの社会、事業再編の促進など、省庁横断で政府に司令塔を作って検討していく必要があります。今の有識者会議はどちらかというと感染症の専門家が中心でしたが、これからは経済や危機管理の専門家もしっかり議論に加わってもらわなければいけません。

 昨日は憲法記念日でした。前回のこの欄で述べたとおり、緊急事態にどこまで私権の制限ができるのか、定足数緩和など国会の機能確保の必要がないのか、議論することは山積しているにもかかわらず、一部野党が憲法審査会の幹事会にすら出席しないという事態は大変問題だと思います。今は与党も野党も国難の克服のために全力を尽くすべきです。