【真に求められるもの】
米国トランプ大統領による関税措置などの諸施策が猫の目のように変わり、世界が振り回されています。
大切なのは、どのような措置が採られようとそれに対して適時的確な対策を講じることと、対外的にトランプ大統領に対して粘り強く国益を主張し(正論を訴えても響かないので先方にとっての利を訴えて理解を得る)、他の諸外国とは上手く連携することです。
給付とか消費税減税を主張する方もいますが、車が売れなくて困っているときに1人5万円配ることにどれだけの意義があるか不明ですし、消費税減税のもたらす意義や法改正に要する時間などタイミングを考えると、もっと適切な物価高対策や生産性向上などの対策を講じることが必要だと思います。春闘の時期ですので賃上げを(中小企業も含め)しっかり確保することが大事です。
【ゆでガエル日本の象徴】
私がこの間取り組んできた教育の充実もそうですが、日本は世界に今様々な場面で取り残されており、追い付き追い越すために相当努力しないといけない状況です。なぜ80年代に世界をリードしてきた日本がこんな状況になっているかと言えば、一言で言って他国が危機感に基づき改革を行ってきたのに、日本が恵まれた治安や国内市場にあぐらをかいて改革を怠ってきたからに他なりません。
確かに日本は格差が他国に比べて小さく、政治は安定しています。しかしその代償として、伸びる分野で諸外国と切磋琢磨しないしは連携して、「出る杭を伸ばす」対策が極めて不十分であり、新興のICTやAIなどの分野で十分な人材育成や企業支援などをしてきませんでした。逆に、マイナンバーや新事業への国民の拒否感を理由に政治が背を向けてきた側面があります。
経済安保も大事ですが、幕末から維新にかけて日本が歩いてきたような改革を行い、現在求められている防衛力強化や少子化対策にも他国の成功例を大胆に取り入れることでブレイクスルーを目指していきます。再エネ・新エネの強化も然りです。
【炎の弾丸出張韓国編】
4月27日から29日にかけて、私が幹事長を務める党の情報通信戦略調査会の幹部で、コンテンツ産業が日本を凌駕している韓国に出張し、日本のこれからのあるべき姿を模索しました。
折しも6月の韓国大統領選挙に向けて、最大野党「共に民主党」は私たちの到着日の27日に党内選挙を終え、イ・ジェミョン(李在明)前代表を公認候補に選出したところでした。イ前代表は、次期大統領候補について尋ねた世論調査の支持率トップに立っています。
私の強い要望と大岡敏孝事務局長のご尽力により、タイムリーにも日韓議員連盟の韓国側会長を務める与党のチュ・ホヨン(朱豪英)議員及びキム・ソッキ(金碩基)議員(議連副会長)、野党のミン・ホンチョル(閔洪喆)議員(議連幹事長)と会食の場を設けることができました。野田聖子会長は日韓議員連盟のメンバーでもあられ、日韓国交正常化60周年を迎える中、安全保障問題はじめこれからもいかなる政権であれ日韓の連携を大切にすべきだと力説され、私も文部科学大臣時代の両国間の草の根交流の支援についてお話ししました。とても和やかでよい機会になったと思います。
【韓国のコンテンツ産業に学べ】
日本のコンテンツ産業は、強みがあると言われるアニメにせよ、押されていると言われる音楽やドラマ・映画にせよ、クリエイターないし俳優の支援やCG・AIなどの最新技術において他国に相当遅れをとっています。
放送業界を取ってみても、日本の民放会社は若者がテレビ離れをしているのにかかわらず旧態依然とした広告収入に頼り、コンテンツが横並びバラエティー番組の域を出ていません。
韓国であれば、放送局から下請けをしている制作会社もNETFLIXなどのOTT(プラットフォーム)事業者とのタイアップや、他国コンテンツのリメイクなどによってビジネスモデルを大きく変化させ、人材の海外展開などにも積極的です。
韓国の中央日報系の制作会社SLLパクジュンソ制作部門代表からは、日本の放送局は「これだけの仕事をしよう」という発想ではなく、「これだけの予算だからこれだけの仕事しかできない」というスタンスでしか協力がいただけないという耳の痛い言葉をいただきました。予算が足りないのであればどうすれば収益を確保できるのか、官民挙げて真剣に検討すべき時期が来ています。
芸能事務所も、日本の成熟した国内市場を確保するため、IP(知的財産)の囲い込みに血道をあげ、いかにオープンにそれを動画配信し、知名度を世界に広げ、キャラクターグッズなど2次・3次ビジネスにつなげるかというオープンなスタンスに欠けています。
フジテレビやジャニーズ事務所の不祥事を機に、ガバナンス改革も含め、ビジネスモデルを大幅に転換させなければいけません。
また、政府の施策としても、韓国ではKOCCA(韓国コンテンツ振興院、2009年設立)を通じた放送・音楽・映画・漫画などあらゆるコンテンツを知的財産管理からオンライン配信まで統一的に支援し、しかも業界に乱立する中小企業を横串に刺してアドバイスなどをしています。
日本でも、今度6月にまとめる骨太の方針では、放送コンテンツの制作力強化・海外展開推進のため、やはり多様なIP創出に向けた企画・開発段階の支援、高機能かつ先端的な技術の活用の支援、高度専門人材の育成、海外発信の強化・流通円滑化を抜本的に進めるよう提言に盛り込むべきです。併せて、日本のコンテンツの多重下請け構造やビジネス性の低い製作委員会方式などのあり方についても再検討を迫ります。