2022年12月11日日曜日

令和4年12月11日

 【優先順位を考えよ】

 昨日10日、旧統一教会被害者の救済新法が参議院で成立し、臨時国会は閉会しました。

 弁護士出身議員として党内議論で尽力させていただきましたが、担当者はじめ多数の方々のおかげで与党のみならず、立憲民主党・国民民主党・日本維新の会など野党の多くが賛成して下さったことに心から安堵しています。

 本件では救済の必要性とともに、憲法上保障された信教の自由とのバランスをどう取るかが極めて難しい要素となりましたが、これまで規制がなかった分野であり、まずはしっかり迅速に法律を施行し、その状況を見てさらに今後の対応につなげていくべきと考えます。


 自民党法務部会や私が会長を務める共同養育支援議員連盟が後押ししてきた法制審議会家族法部会の中間試案のパブリックコメント募集も、12月6日にいよいよ開始されました。締め切りは2月18日の午前0時まで。是非「子の最善の利益」「原則共同親権・共同監護」の輪が広がるよう、これからも活動を続けます。



 一般会計28.9兆円の第2次補正予算が成立し、ガソリン・電気・ガスなどの価格抑制に充てられます。また、私も後押しした学び直し、脱炭素社会の実現などいわゆる「新しい資本主義」の加速にも使われることになります。

 一方でその財源は国債発行が8割となり、財政は一層厳しくなります。そのうえロシア・北朝鮮・中国の動向など厳しい安全保障に鑑み、反撃能力の保有をはじめとして、防衛費をNATO(北大西洋条約機構)諸国の目標であるGDP比2パーセントに向けて増額していく方針を与党として示しています。


 岸田総理は8日、政府・与党幹部の政策懇談会で、今後5年間の防衛費を43兆円とし、2027年以降は今より年4兆円の増加が必要となるため、その安定財源を確保するため年1兆円の増税が必要だと表明するとともに、今年年末までにその内容について与党で決定して欲しいと指示しました。法人税増税が軸になる方針とも伝えられています。

 しかしこれを受けて9日に開催された党の政調全体会議では異論が続出。私も、「財政再建を軽視するわけではないが、これまで財政の議論をする際には党で国の債務残高対GDP比の今後の見込みを検討したり、行革本部で可能な歳出削減額を議論したりしてきたはず。歳入が上振れて緊急に増税する必要もない中で、党で議論もしていない1兆円という金額を突如示し、年末のこの時期に賃上げや設備投資に冷や水を浴びせるような増税の方針を無理やり決めろというのはプロセスとして問題がある」と発言。多くの議員の賛同を得るとともに、ニュースでも取り上げられました。


 何を優先してどういう支出をいつ行い、そのために必要な財源を歳出削減・剰余金の活用・予算の使途変更などからどう行っていくのか、国民に納得できる議論をオープンに行っていかなければいけないと考えています。

2022年11月23日水曜日

令和4年11月23日

 [脇を締め、そして・・・]


 岸田内閣の閣僚が相次いで辞任となり、厳しい政権運営が続いています。現在補正予算の審議中であり、旧統一教会への対応も含め、難しい国会の日々です。


 コロナ感染者数が増えてはきたものの、これまでの知見が積み重なり、社会経済活動は回復の兆しを見せています。しかしウクライナ情勢長期化に伴う物価高や円安の影響で依然として厳しい業態も多く、またそれらが消費に大きな影響を及ぼしていることもあり、一刻も早く補正予算を成立させて経済対策を実施するとともに、税制改正論議も行わなければいけません。

 私が幹事を務める憲法審査会は、幸い党派を超えて毎週議論を行っており、緊急事態における議員任期延長などだいぶ論点が整理されてきたと感じます。また、北朝鮮からの相次ぐミサイル発射や中国の体制強化などを受けて防衛力強化が急務であることもだいぶ国民的理解が進んできていると思います。


 課題解決のために、最大限の危機管理を行う必要があることは言うまでもありません。脇を締め、リスクの最小化を図るとともに問題の迅速な解決を行うことは当然必要です。

 と同時に、私が必要だと考えるのは毅然とした態度です。正しいことを正しいと言い、守るべきものはしっかり守る。筋を乱すと取り返すのには大きなコストがかかります。またよくない先例を作ることにもなります。

 私が現在取り組んでいる人材育成、エネルギー、情報通信、共同親権などの諸課題について、難しいながらもしっかり進めていく覚悟です。

2022年10月11日火曜日

令和4年10月11日

 [安心の確保に向けて]


 69日間の臨時国会がスタートし、現下の物価高対策、厳しい安全保障環境への対応、コロナ後の社会構築など、極めて重要なテーマが議論されています。


 まず、現在高騰している燃料や穀物などの負担に対する補助を中心とした対策のみならず、大胆な補正予算の編成を含む総合的かつ迅速・適切な経済政策を講じなければいけません。秋から冬への電気不足について需要・供給それぞれひっ迫を防ぐあらゆる対策を講じます。党の金融調査会の会長代理を拝命したので、中小企業の資金繰りなど金融支援についてもしっかり講じていくとともに、必要な設備投資や事業再編の後押しをしていきます。

 原資を確保し、医療・介護・保育などはもとより、各業種で非正規職員を含めた賃上げ促進など待遇改善・長時間労働是正を進めていかなければいけません。教員の方々についても部活動の地域移行などを進めていきます。


 感染症が流行した際に医療機関に病床確保を義務付けられる感染症法の改正を実現することと合わせ、円安のメリットを生かしコロナ後を見据えた水際対策緩和、1万円以上割引となる全国旅行支援や観光産業の高付加価値化を行います。農産物を含む輸出の拡大や海外からの投資促進などもしっかり進めていきます。

 また、今後を見据えて気候変動対策(GX)、デジタル分野の抜本的強化(DX)に引き続き取り組みます。岸田政権が原発政策再検討に舵を切っても、私が会長を務める再生可能エネルギー普及拡大議員連盟の活動はいささかも重要性を失っていません。所沢で党派の壁を超え、市民の方々とともに始めた温暖化対策についての意見交換を含め、具体的な提案を行っていきます。また、デジタル庁の権限・体制強化、マイナンバーカードのさらなる普及(健康保険証や免許証)や利便性向上、ポイント付与などを進めていきます。地方創生にデジタル改革を活用することは急務です。


 「新しい資本主義」の柱として、人材育成の促進と経済安全保障の確保が挙げられています。

 この度党の教育・人材力強化調査会長への留任が決まり、こども家庭庁の発足に向け個別最適化した教育の充実に取り組むこととなりました。さらに、デジタル人材やグローバル人材の育成、学び直し(リスキリング)、大学改革と合わせた学びの支援など、しっかり予算を確保していきます。経済安全保障については、半導体、幹事長を務めるバッテリー議員連盟で取り上げている蓄電池などの重要物資やサプライチェーンの確保、サイバーセキュリティ、秘密特許保護などの取組みを進めるほか、宇宙・海洋などの開発、重要土地取引規制、秘密取扱者適格性確認(セキュリティクリアランス)の検討にも関わっていきます。


 激動するウクライナ情勢、北朝鮮から相次いで発射されるミサイル、台湾やアジア地域における中国の脅威の拡大などに対し、反撃力の強化など防衛予算を確保することは喫緊の課題です。もとより同盟関係強化や外交力の発揮は必要ですが、即時対応も考えれば自らの国を自ら守ることの重要性は極めて大きくなっています。自衛隊の明記など憲法改正についてもしっかり議論していきます。機能不全に陥っている国連の改革についても党派を超えて検討していきます。

 また、激甚化する災害対応のためにインフラ整備など国土強靭化をしっかり進めていきます。


 旧統一教会問題について、党のガバナンスコード改正などによりしっかり襟を正して関係を見直すとともに、自身弁護士の経験を生かし、党で検討される被害救済・予防を実効化するための消費者契約法改正や相談体制の充実に取り組んでいきます。


 不安の時代と言われますが、明るい希望が持てるよう全力を尽くすことをお誓い致します。

2022年9月14日水曜日

令和4年9月14日

[説明のあり方]

 安倍元総理の国葬への反対意見が大きいと報じられています。

 お亡くなりになったエリザベス女王の葬儀がまぎれもなく「国葬」であるのに対して、安倍元総理の葬儀は既に終わっていますから、上記「国葬」は海外の弔問客を迎え、かつ故人の業績を偲ぶ「お別れの会」に近い性質のものと考えます。

 これまでの首相のお別れの会となぜ差を設けるのか、岸田総理はこう説明されています。
1.国政選挙を6回にわたり勝ち抜き、国民の信頼を得て憲政史上最長の8年8カ月にわたり総理を務められた。
2.東日本大震災からの復興、日本経済の再生、日米関係を基軸とした戦略的外交など、多方面で歴史に残る業績を残された。
3.諸外国で議会の追悼決議など様々な形で敬意と弔意が示されている。
4.民主主義の根幹である選挙活動中の非業の死であり、こうした暴力に屈しないとの国としての毅然とした姿勢を示すべき。
 また、国民に弔意を強制するものではないとされています。

 国葬とするかどうかの基準が曖昧だとか、巨額の国費がかかるなどの批判がありますが、上記理由や、過去吉田元総理以外に国葬儀を行った例がないこと、現在のふさわしい儀礼の規模や警備の検討などからして、決して不当なものとは言えないと考えます。無論、総理には引き続き説明に努めていただくようお願いします。

 統一教会と元総理との関係を問題にする意見も大きくなっています。

 旧統一教会が霊感商法などで大きな社会問題を起こしてきたことは事実であり、そこに政治との関係が影響していたことはしっかり見直していく必要があります。
 安倍元総理のみならず、与野党を含め数多くの議員が当該団体に何らかの関与をしてきた事実が明らかになっており、きちんと精査したうえで今後のそうした関係の見直しや消費者被害の救済・予防の取組みをしていかなければいけません。安倍元総理の国葬儀は予定どおり行い、残された私たちが責任を持って進めていくべきと考えます。

 私個人も昨年1回、今年1回、地元での集会での挨拶依頼があり、統一教会との関係の検証を十分行わないまま冒頭のみ出席しました。(その他祝電、メッセージ、講演、寄付やパーティー券の購入依頼、ボランティアの依頼などは一切行っていません。)当時は当該団体についての報道もなく、脇が甘かったことは反省しております。今後は一切関係を持たないように心がけます。

[炎の弾丸出張~北海道編]

 使用済み核燃料を活用する大間原発、プルトニウムを取り出す六ヶ所村再処理工場、それぞれの完成が延期となり、さらに高レベル放射性廃棄物の最終処分についてもまだ文献調査が決まった段階ですので、政府が今般方針を決めた原発の新増設を行うのはまだまだ困難な状況と言えます。

 このような中で脱炭素を進めるためには、前回この欄で触れたとおり会長を務める再生可能エネルギー普及拡大議員連盟の活動を強化して政府にしっかり働きかけないといけません。

 これから大きな進展が見込まれる風力発電について、一昨日12日から2日間で北海道の寿都町と室蘭市の先進的な取組みを視察しました。

 寿都町に関しては、大阪ガスグループ会社が昨年高台に設置した10基の風車(計27メガワット)を視察した後、湾沿いに1999年から2011年にかけて町により順次建設された11基の風車(計17メガワット)を視察しました。1989年に運転開始した5基は老朽化のため既に運転を停止しているとのことです。現在年間9100世帯分の発電を賄っています。
 町立の風力発電所はローターの直径が初期の30メートルから比較的新しい71メートルまで幅がありますが、これは世界水準からすれば小規模な風車で、今は大きさも強度も上がっています。現在もさらなる洋上風力発電所の設置に向けた調査をNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が行っています。

 課題は送電網の強化やFIT(固定価格買取制度)終了後のビジネスモデルの再検討。ただ町にとって収入の1割となっているこの事業は温暖化対策のみならずこれからの地方創生にも役立ちます。蓄電池の活用などより安定電源とするための取組みと合わせて応援していきたいと思います。

 片岡春雄町長は、上記した高レベル放射性廃棄物の最終処分場候補地としても文献調査に応募しています。その熱意には感心するばかりです。

 昨日13日には室蘭市を訪問し、海の深度や沿岸の用地などが風車材料の搬入や建設作業に適した「基地港湾」として注目されている室蘭港を青山剛市長たちともども視察させていただきました。
 併せて、ベルギーの会社と合弁で大規模なSEP(自己昇降式台)船を導入し、海底に着床させて風車組立作業を行う準備をしている五洋建設株式会社の新工場で、SEP船に活用する足場組みの作成現場を視察させていただきました。

 室蘭市には私も2017年に視察に訪れた北海道内初となる移動式水素ステーションが導入されるなど、再エネや蓄エネに対する意識が高く、今後漁業組合などとの権利調整など難しい課題は残りますが、全国的に是非参考にしていただきたく、またその動向が今後の北日本の洋上風力発電の入札に与える影響も想定されるため、今後議連でも取り上げていきたいと思います。

2022年8月8日月曜日

令和4年8月8日

 [脱・ゆでガエル]


 5日、参院選後初となる臨時国会は3日間の短い会期を終えました。しかし一息ついている暇はありません。


 ウクライナ情勢は、ロシアが東部ドネツク、ルガンスク州で実効支配を広げ、現在は南部で激しい戦闘が続いています。それが世界経済にも依然大きく影響しています。

 加えて、アメリカのペロシ下院議長による台湾訪問に反発した中国が、台湾周辺海域で大規模な軍事演習を行うとともに、日本の排他的経済水域を含む海域にミサイルを撃ち込んで地域の緊張を高めています。

 また、日本の佐渡金山の世界文化遺産登録申請が手続の不備により今年は見送りになり、韓国のユネスコ委員が出し直しのタイミングで自国労働者の強制徴用問題を提起するのではないかと言われています。


 様々な激動が続き、かつ経済のグローバル化やコロナ後の国境を越える人の往来が進む中、日本が外交・防衛問題でどこまで毅然とした対応を示せるかは大きなテーマです。まずは価値観を共有する国々との連携を強め、国際法遵守の枠組みの主張とその実効性確保(防衛力増強を含む)を行うべきです。情報発信力に欠ける所のある日本の外交を立て直さないといけません。


 そして経済に関しては、エネルギーや飼料などから物価全般に波及している価格上昇に対し、最低賃金の過去最高レベルの引き上げをはじめとする賃金上昇が、ペースとしても金額としても追いついていないのが現状です。
 政府が予備費や補正予算で、あるいは地方自治体が国由来の交付金で、物価対策や生活支援を講じていますが、一時的であるとすれば金融面も含めた総動員が必要になるでしょう。


 一方中長期的な生産性向上も待ったなしです。DX(デジタルトランスフォーメーション)に加え、GX(グリーントランスフォーメーション、エネルギー構造の転換と温暖化対策)も劇的に進める必要があります。エネルギー供給力拡大のために安全の確認された原発の再稼働を政府は掲げていますが、温暖化に伴う冷却水確保の困難や放射性廃棄物処分など持続可能性を考えた場合にはそれに過度に頼るのは現実的でなく、蓄電池などの調整力を伴いかつ価格を引き下げた再生可能エネルギーの最大限の普及は絶対に必要です。環境面への配慮などをしつつ推進していきます。無論経済安全保障の面から部品を含め国産化をしっかり進めていきます。引き続き再エネ議連会長・バッテリー議連幹事長として尽力します。


 国産が必要なのは第7波を迎える新型コロナウイルス対策に必要なワクチンや治療薬も同様です。創薬のイノベーション推進のためには特許や治験の充実に加え、どこまで医療が経済の論理に寄り添うことが可能かという根本的な議論をする必要があるように思います。


 そして国産製品を充実させるには、人材の国際的交流を強化する必要があるというパラドックスと向き合わなければいけません。攘夷から開国への転換です。

 水際対策の合理的緩和、技能実習制度の抜本的見直し、国際共同研究の強化と国家安全保障の両立など、これから進めていくべき改革はいくつもあります。世界は熾烈な競争の中にあります。先月17日から21日まで日本・シンガポール友好推進議員連盟の企画で同国に出張し、そのことを痛感しました。

 日本は一周遅れであるが故に他の先進国の危機(不況・コロナ爆発)を避けられているとも言われますが、一周遅れでもついて行けなくなれば他国からは見放されることになるでしょう。ゆでガエルとならないようしっかりアクセルを踏まなければいけません。

2022年7月11日月曜日

令和4年7月11日

 [問われる司法のあり方]


 第26回参議院議員選挙は昨日7月10日投開票日を迎え、おかげさまで自民党は単独で改選議席過半数を獲得する大きな勝利を得ることができました。


 会長を務める自民党埼玉県連が全力で応援した関口昌一候補は、目標とした100万票の獲得には至りませんでしたが、有力候補がひしめき合う中トップ当選を果たし、連立与党である公明党公認西田実仁候補も当選となりました。多くの関係の皆様のご尽力の賜物だと深く感謝しております。


 選挙戦最終盤の8日、奈良県で応援演説をされていた安倍元総理が銃撃されて亡くなるという大事件が起きてしまいました。

 安倍さんは私が2004年の埼玉8区衆議院議員補欠選挙に立候補する際、自民党立党以来初となる全国公募を実施され、81人の応募者の中から私を選び、かつ当選に導いて下さった政治の世界の産みの親です。また、その後も我が強い私を見放すことなく育てて下さり、安全保障担当の首相補佐官や当時の閣僚最年少だった文部科学大臣など、重要な役割を与えて下さいました。


 憲政史上在任期間最長の総理として諸外国でも高く評価され、今回の訃報に対して世界中から寄せられる哀悼の言葉の数々に改めてそのプレゼンスの大きさを実感する次第です。


 今回の参院選では、深刻化するウクライナ情勢への対応や物価高対策などが争点となりましたけれども、連日にわたって私の地元埼玉を含め、同志の応援に走り回った安倍元総理の魂に報いるとともに、暴力による民主主義への挑戦には決して屈しないことを有権者の一票一票の行使によってお示しいただきたいとも最後まで訴えさせていただきました。

 冒頭の結果をきっと安倍さんも喜んで下さると思います。後に残された私たちが悲しみを乗り越え、その志を受け継ぐとともに発展させていくことが、故人に対する何よりの供養になると信じています。安倍元総理のご冥福を心からお祈りするとともに、ご家族やスタッフの皆様にお悔やみ申し上げます。


 今回の安倍元総理の事件で問われるのは、街頭演説会場における警備のあり方です。オープンスペースに不特定多数の人が行き交い、そして集まる街頭演説では、これまでも世界で要人を狙う事件が発生してきました。国の命運を左右しかねない結果となる以上、このことを改めて考える必要があるのではないでしょうか。

 私が文部科学大臣在任中に街頭演説した際、聴衆の一人が通りに出ようとしたのを埼玉県警が制止したり、安倍元総理が3年前の街頭演説中にヤジを飛ばした二人を北海道警が排除したことが問題となりました。後者は現在訴訟が継続中で裁判自体にコメントすることは控えますが、私が大臣時代にコメントしたとおり、街頭演説は党派のいかんにかかわらず候補者がその意見を公衆に伝える民主主義にとって最も重要な表現行為(憲法21条による保障を受ける)だということを重く考えるべきです。


 聴衆は候補者の意見を聞きに来ているわけで、来場した一部の人との議論を聞きに来ているわけではありません。(それは別に多くの機会が設けられています。)聴衆の聞く権利も憲法21条で保障されているはずです。ましてやヤジで当該演説への集中をそいだり、妨害するような行為が、憲法上保障されているというのは行き過ぎではないでしょうか。公選法における選挙の自由を妨害する罪は確かに限定的に適用されますが、刑罰に抵触しない程度の行為だからといって一切規制の対象とならないとするのは明らかに上記した憲法上の権利を軽視したものでしょう。

 もちろん警備に際しては聴衆個々人の安全や人権への最大限の配慮が必要となり、限界はありますが、今回の事件をきっかけに改めてそのあり方を議論すべきだと考えます。


 実は司法は国のあり方そのものを左右する大きな意味を持つ場合があります。

 私が司法試験受験生だった平成初期、憲法学会では「団体の自律性」を重視するトレンド、裁判が主流でした。一般社会における法秩序やその確保のための司法審査が、ある団体の運営や規律にどこまで及ぶかを議論する際、私的団体の自治や地方自治などの観点から極力抑制的に行うべきだという議論です。

 当時私はこの問題は一定のバランスをもって議論されるべきでないかと思っていました。そしてその思いは平成7年に発生したオウム真理教の地下鉄サリン事件などにおいて確信となりました。団体にもその作用にも様々なレベルがあります。公的な関与を抑制するべきというドグマがあまりに強く出すぎると、時に大きな禍根を残すことがあるのでないかと思います。


 現在、私は超党派の共同養育支援議員連盟の会長を務めており、世界的に見て稀で、かつ実子誘拐などを誘発していると海外から指摘されている離婚後の単独親権制度に関する法整備について、政府の法制審議会家族法部会と並行して議論をしています。

 その議論の過程で見えてきたのは、離婚後の親権獲得について司法が「継続性の原則」すなわち子供を連れ去った親が継続的に監護を行えば、その継続が子の利益になると判断する傾向が強いということでした。

 子供の権利条約は子供がそれぞれの親から引き離されない権利があると定めています。また、法務省は正当な理由のない子の連れ去りが実親によるものであっても未成年者略取誘拐罪に該当しうると答弁しています。

 これらを踏まえて、親権の問題を含め、民事刑事にかかわらず裁判所には迅速かつ両親の意見を公正に踏まえた判断をして欲しいし、養育費の支払いと親子交流のあり方は子の利益の観点から一体として判断して欲しいと思います。


 アメリカでは連邦最高裁の判事の構成により判決が大きく変わり、それが国のあり方を根底から変える意味を持つことが知られています。日本の裁判官はその独立性が憲法上保障され、民主的なコントロールが及びにくいですが(それでも衆議院議員選挙時に最高裁判所判事の国民審査という制度があります)、そうであるが故に、司法がもたらす大きな国への影響に私たちは関心を持つべきです。

2022年6月11日土曜日

令和4年6月11日

[未来を創る参院選]

 参院選投票日まであと1カ月となりました。岸田内閣の支持率も自民党の支持率も、国会最終盤になっても高い水準を保っています。

 理由については色々な分析がされていますが、総理の「聞く力」と、激動する海外諸国に比しての手堅い諸施策の運営が評価されているのは間違いありません。

 今度の選挙で問われるのは、安定した政権基盤を維持するのか否かです。

 野党の中で、立憲民主党と共産党は、9日の衆議院本会議での内閣不信任決議案に賛成しましたが、日本維新の会と国民民主党は反対し、足並みの乱れが露呈しました。
 参院選一人区の調整も野党間で十分進んでいません。

 気を緩めることなく、全力で選挙に臨んでいきます。

[これから進むべき道]

 特にウクライナ問題でわが国の安全保障をどう強化するかが大きく問われるようになりました。防衛費はNATO諸国のGDP比目標2%以上を念頭に置き、充実させます。
 日米安保体制の中、これまでは「盾」の役割に徹して迎撃力を控えめに備えてきましたが、ミサイルなどの攻撃がされることを念頭に専守防衛の範囲内で「反撃力」を保有します。憲法への自衛隊明記も行います。

 ロシアへの経済制裁に伴い高騰している資源価格について適切に対応します。現在実施中の原油価格・物価高騰等総合緊急対策による支出により、ガソリン価格は欧米より2割近く低く抑えられており、2月以降の消費者物価上昇率も日本では欧州の4分の1となっています。今後も肥料・燃料対策を含むエネルギー需給ひっ迫への手当や、中小企業を含めた賃金上昇に向けた諸施策も講じていきます。

 コロナへの対策も引き続きしっかり行います。リスクの高い方への4回目ワクチン接種が開始されましたが、今後は国産の治療薬やワクチン開発も確保します。また、医療提供体制を充実させ、感染症の際の司令塔機能を確立するとともに国と地方の情報連携もしっかり行えるようにします。
 水際対策を国際水準に合わせて緩和し、円安に伴う訪日客の復活も目指していきます。

 中長期的に必要なのは、私も力を入れてきた「人への投資」です。先端技術の人材育成からリカレント教育(社会人教育)まで、多様で質の高い教育の充実に努めます。また学びの保障も含め、人材育成や科学技術イノベーションへの予算を大幅に拡大します。スタートアップ(新規創業)への投資も急務です。

 今後の成長の牽引となるのが、「グリーン」と「デジタル」などです。脱炭素に向けた取組みを再エネ議連会長として応援していくとともに、デジタル田園都市国家構想による「全国どこでも便利な生活」を実現します。テレワークやオンラインによる授業・診察などの可能性もさらに追及していきます。

 不安に寄り添い、一人ひとりの幸せを守ることが大切です。
 不妊治療の保険適用が開始されました。出産一時金の増額、育休や放課後児童クラブの拡充などを進め、こども家庭庁の設置に伴って全ての子供の幸せな成長を応援していきます。

 孤独・孤立やいじめなどへの対策、介護予防・介護休業や地域包括ケアシステム、年金制度の充実などにもしっかり取り組んでいきます。真に必要な方々への各種給付金の迅速な支給も不可欠です。

 これからは経済安全保障・食糧安全保障の観点が重要になってきます。供給網(サプライチェーン)の強化や、食糧輸出力の強化が求められます。
 また多発する災害への備えも不可欠です。防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化計画を着実に実施するとともに、地域インフラの整備もしっかり行っていきます。

 財政でも、環境でも、この日本を持続可能でかつ明るい国にするのは今を生きる私たちの責務です。官民・中央地方・みんなで協力し合わなければいけません。
 そのために私も全力を尽くしていくことをお誓い致します。

2022年5月8日日曜日

令和4年5月8日

 [炎の弾丸出張~佐渡金山編~]


 一昨日6日から7日にかけ、所属する自民党「『佐渡島の金山』の世界遺産登録を実現する議員連盟」の有志で佐渡島の視察に伺いました。


 同所は17世紀における世界最大の金の生産地で、極めてレベルの高い独自の手工業を確立して日本経済や国際貿易に大きな影響を与えました。これまで長らく世界遺産登録申請が検討されてきましたが、今年2月にユネスコの世界文化遺産への推薦書を日本が提出し、秋には委託を受けたイコモス(国際記念物遺跡会議)が審査に入り、その勧告を受けて来年6~7月に21か国からなるユネスコ世界遺産委員会が登録の判断をすることになります。

 来年の世界遺産委員会の議長国はロシア。現在の世界情勢を踏まえ、スケジュールに見通しは立っていません。


 さらに、韓国が「戦時中に韓国人が徴用されていた場所が世界遺産に登録されるべきではない」とクレームをつけています。日本は強制徴用を否定するとともに、登録については江戸時代を対象としていることから、こうした批判は当たらないと反論しています。

 実は私が文部科学大臣時代にフランスにてユネスコのアズレー事務局長に対し、南京大虐殺の資料が世界記憶遺産に登録されたのを受けて「加盟国が登録手続に関与して過度の政治化を防ぐべきだ」と訴えてプロセスの改革が進んでいます。しかしながら韓国がこれを逆手に取って「自分たちは当事者であり、反対の主張を聞いて欲しい」と訴えてくることは十分にあり得ます。


 日本は登録に向けて、議員連盟の中曾根弘文会長の外務大臣時代の秘書官を務めた滝崎官房副長官補をヘッドとした、外務省や文化庁などの局長級からなるタスクフォースを設置して対策を始めました。今回の議連の出張にも同行していただき、色々意見交換をさせていただきました。


 今回の出張では、説明施設のきらりうむ佐渡や復元された奉行所で佐渡の歴史を詳細に学び、さらに江戸期の宗太夫坑道、近代の道遊坑道に現に入って当時の作業場を視察しました。また、南部に位置する西三川砂金山では、山を削り「大流し」という水路で土砂を流して沈殿する砂金を採取した痕跡や集落が今も残る様子を見ることができました。


 また特別企画として真野行政サービスセンターにて拉致被害に遭われた地元曾我ひとみさんと面談し、他の拉致被害者との接触や当時の北朝鮮の状況について、かなり突っ込んだやり取りをすることができました。同席された佐渡市の渡辺市長が「曾我さんがこんなに立ち入った話をするのを聞いたことがない」とおっしゃる充実した質疑応答で、これを何とか拉致問題の解決につなげたいと決意するとともに、引き続き広報啓発することの必要性を痛感しました。


 北朝鮮からは昨日また弾道ミサイルが発射されています。韓国の政権交代で色々状況が変化するでしょうが、しっかり取組みを進めます。

2022年5月5日木曜日

令和4年5月5日

 [野党に安全保障を託せない決定的な理由]


 2日前の5月3日は憲法記念日。私が会長を務める自民党埼玉県連では、党の憲法改正実現本部事務総長であり、私とともに衆議院憲法審査会の幹事を務めておられる新藤義孝議員を講師として憲法フォーラムを開催しました。

 また、第2部として埼玉政治学院オープン講座と銘打ち、ウクライナ問題で連日尽力されている林芳正外務大臣に、これからの日本の安全外交についてお話ししていただきました。


 関係の皆様への急なご案内でしかも連休真っただ中にもかかわらず、会場一杯の400人近い方々にお越しいただいたことに御礼を申し上げます。私から冒頭の挨拶で、「憲法改正は参院選の重要な争点になる。是非今後県内各地区でも同様の集会を開催して欲しい」と申し上げ、大きな拍手をいただきました。


 施行75周年となる憲法は、民主主義の定着と経済発展に大きな役割を果たしてきたのは事実です。しかし世界がどんどん変わる中で、それに対応できない日本の姿を浮き彫りにしてしまいました。


 新型コロナウイルスの蔓延にあって、迅速な危機管理や国民の権利を一部制限する仕組みが決定的に欠如していることが明らかになりました。東日本大震災の時もそうでしたが、事が起きてから法律を作るのでは間に合わず、しかも議会が一時期開催できないような事態に対応することができません。

 ウクライナ問題では、今なお国益をむき出しにして力による現状変更のために国際法を無視した武力攻撃をする国がすぐ隣にあるという厳然たる事実を目の当たりにし、現在の自衛隊や憲法9条のままでよいのかという疑問を私たちが突き付けられている状態です。


 国民の憲法に関する意識も変わりました。どのメディアでも憲法改正の議論を進めるべきだとの意見が7割を超え、戦後一文字も変わっていない憲法がこのままでよいのか疑問に思う国民がどんどん増えていることがわかります。

 1日に共同通信が実施した世論調査の見出しは「9条改正、賛否が拮抗 改憲気運『高まらず』70%」となっていますが、これは同社の主観の入ったミスリードだと思います。設問には「9条改正の『必要性(括弧は筆者)』があるか」とあり、「9条改正に賛成か」とは問われていません。しかも同じ調査の別項目に「自衛隊の明記に賛成か」という問いがあり、これには賛成が67%と多数を占めているにもかかわらずそのことを記事では紹介していません。さらに、改憲気運が高まっていないとする意見の中では「『どちらかといえば(括弧は筆者)』高まっていない」という意見が70%中7割の48%であり、国民の正確な意思を伝える見出しとしてかなり問題があるでしょう。

 憲法9条改正に反対する団体の支持を受けている野党は、9条のもとでも自衛隊は違憲とされていないと主張します。しかし戦力不保持をうたう同条2項との関係で自衛隊を合憲と解するのは「自衛権は認められている」「必要最小限の実力組織で戦力ではない」など、普通には読めない苦しい解釈を余儀なくされるのであり、現に憲法学者の中にはいまだに自衛隊を違憲と主張する方がいるし、教科書では自衛隊の存在に憲法論争がある旨紹介されています。

 共産党の志位委員長に至っては、綱領で自衛隊は憲法違反だとしながら緊急時には活用すると、自衛隊の方が聞いたら激怒するような理屈を展開しています。しかも防衛力の増強への足かせになったり、日本学術会議が防衛に関する研究を進めることに慎重となる根拠にもなっています。


 特筆すべきは、今回のウクライナ侵攻で、野党が主張してきた「集団的自衛権の容認は憲法違反で許されない」という批判が完全に破綻したことです。

 私たちは、2015年平和安全法制定の際、これまで政府が憲法解釈で認められないとされてきた「他国への攻撃に対しても自衛権を行使する権利」である集団的自衛権を、「自国の存立危機事態」をもたらす場合限定的に認める解釈変更を行い、これに野党は徹底的に反対しました。しかし今回、ロシアがウクライナ侵攻に踏み切ったのは、ウクライナがNATO(北大西洋条約機構)に加盟せず、米国のバイデン大統領が「ウクライナが攻撃されても米国には参戦義務がない」とコメントしたことが決定的な理由となったのです。

 野党は「集団的自衛権を認めると他国の戦争に巻き込まれるおそれがある。個別的自衛権の解釈で十分だ。」と主張しますが、抑止力とは「やったらやり返される」という計算により相手方に攻撃を思いとどまらせる仕組みであり、集団的自衛権のもとでこそこのような抑止力が強化されるという現実を全く無視しているのです。現に今回のウクライナ侵攻以降、これまでNATOに加盟していなかったフィンランドやスウェーデンが相次いで加盟の意思を表明しました。


 野党が「このような危機時に憲法論議を進めようとするのは火事場泥棒のようなものだ」というのも全く的外れです。日本は残念ながら戦後の平和に慣れ切ってしまい、危機が過ぎたらもはや当該危機が再び訪れた際に備えた議論ができない国になってしまいました。2003年、SARS(重症急性呼吸器症候群)が流行して対策が議論された際に取りまとめた方針や法改正は、流行の収束とともに沙汰止みになり、今回のコロナ対応に生かされることはありませんでした(今後法改正のみで足りるのかは先述のとおりですが)。

 日本では有事に適切に対応する議論を行うのは有事にしかできないのであり、これからは教育でそうした弊害を是正していく必要がありますが、当面の対応としては今議論をするしかありません。


 これまで自民党に反対する勢力は、日米安保条約反対、PKO法反対、特定秘密保護法反対、平和安全法反対とありとあらゆる場面で安全保障案件に反対し続けてきました。

 日米安保条約で日本が戦争に巻き込まれる、PKOで自衛隊が海外で戦争できるようになる、特定秘密保護法で自由な報道ができなくなる・・・実態はどうだったでしょうか?

 日米安保が中国・北朝鮮・ロシアなどの防波堤となり、PKOは海外で感謝される貢献を日本が行うことに役立ち、特定秘密保護法で日米当局が機微情報を共有して同盟関係がより強固となっています。今はそれらの立法をした時の国論を2分する大騒動がまるで嘘のようです。


 これまでの経験に基づく結論として、安全保障を野党に任せることはできないと断言できます。(維新については憲法改正は賛成してくれていますが、ロシア問題で首をかしげる発言があります。)防衛問題に造詣の深い議員は続々と野党を離れ、自民党に加わってきています。こうした実態を多くの方々に知っていただく必要があります。

2022年4月7日木曜日

令和4年4月7日

[力による侵略を止めるものは]


 ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊ブチャにおける市民400人以上の虐殺は世界中に大きな衝撃を与えました。


 ロシアはこれはロシア軍が撤退した後のものだとか捏造だとか主張していますが、米紙ニューヨーク・タイムズによる衛星写真や動画の解析によれば、それらはロシア軍撤退前の同軍管理下で行われたとのことです。もしロシアが自らの責任を否定するのであれば、現地調査に協力すべきです。


 ブチャ以外の地域でもウクライナ市民の虐殺が報告されており、これは深刻な戦争犯罪と言わざるを得ません。既に日本などがICC(国際刑事裁判所)に提訴していますが、ロシアが同裁判所の管轄に服することを拒否すれば法廷は機能しません。


 国連安全保障理事会がロシアに対する制裁措置を決議しようにも、拒否権がある常任理事国であるロシア(またその支援をしているとされる中国)が拒否権を行使すれば、こちらも機能しません。この事態を受けて世界的に、恣意的な拒否権行使を禁ずるなどの安保理改革を求める声が沸き起こっていますが、残念ながらロシアなどが自主的に応じない限りいくら国際世論が圧倒的に改革を求めてもそれは実現しないのです。


 つくづく感じるのは、法は強制力を持たない限り絵に描いた餅だということです。


 この事態を打開するには、以前もこの欄で書いたとおり、自由主義諸国が結束して「力による現状変更を許さない」というメッセージを、ロシアへのさらなる有志連合による経済制裁、場合によってはウクライナへの人道・軍事支援によって実現するしかないように思います。
 これは私たちにも一定のコストと犠牲をもたらすものではありますが、外交による仲介や努力を続けつつも実施する必要があると考えます。それが第二・第三の悲劇を生じないようにさせる唯一の手段だからです。この事態が相当程度長引くことも覚悟しなければいけません。


 現在、政府や党ではこの事態を受けた経済対策も真剣に議論されています。また、各種制裁実施のための法改正や、緊急事態対応に向けた憲法改正論議についても、国民にオープンな形で進めていきます。

2022年3月16日水曜日

令和4年3月16日

 [本気度が問われる日本]

 ロシアのウクライナへの侵攻が続いています。首都キエフはウクライナへの自由主義諸国による支援もあり、かろうじて持ちこたえていますが、同国南部のへルソン州はロシアにより全域が制圧されたと発表されました。西部の軍事施設にもロシアによる攻撃が実施されています。


 ウクライナ軍の死傷者は1300人、民間人の犠牲者も400人を超えました。民間の病院や住宅などが破壊され、ザポロージェ・チェルノブイリなど原子力発電所も制圧されて危険な状態です。

 一方ロシア軍の死傷者も12,000人以上と言われており、双方に甚大な被害が出ています。


 両国が和平に向けた協議を断続的に実施していますがなかなか折り合う様子がありません。ウクライナからの避難のための人道回廊が設けられていますが安全が確保できていない事例が多いとも報告されています。ただし3月13日時点でウクライナを出国した避難民は約281万人にのぼるとのことです。


 わが国もウクライナからの退避者について在留者の家族など3月13日時点で47人受け入れ表明しており、一時就労資格取得についても便宜を図ることにしています。

 一方、60人ほどまだ残っている在留邦人の退避をはじめ安否確認についても、同国西部リヴィウ市連絡事務所などを通じて行っています。


 これから必要なことは、一日も早い停戦を目指し、自由主義諸国が結束して経済制裁をはじめ強いメッセージを出していくことと、それに伴う経済的な打撃を最小限にしていくことです。しかし後者に重きを置くあまり、またこれまで積み上げてきたロシアとの関係を過度に悪化させないようにするために、日本の姿勢が弱いと世界に取られることは避けなければいけません。


 前回もこの欄で触れたとおり、中国も北朝鮮もこの状況をじっと見ています。ロシアがウクライナにしたことを台湾に対してもするのでないか、また米国がアジアに労力を割けずかつ韓国の政権が保守政権に代わったこの機会を捉えて、北朝鮮が日本に対して軍事的挑発の度合いを強めるのでないか、懸念は尽きません。万一の時に日米同盟や自由主義諸国との連携がしっかり機能するようにするためにも、日本は今回旗幟を鮮明にするとともに、日本独自の防衛力強化を行わなければいけないのです。


 既にロシアやベラルーシの金融機関を対象とした資産凍結、仮装通貨業者への取引停止要請をはじめ、各種制裁措置を講じています。また、外国為替及び外国貿易法に基づく輸出貿易管理令等の改正によるこれらの国への半導体等の輸出禁止も行います。

 もちろん、いくら私たち自由主義諸国が制裁しても中国などを通じた迂回支援がなされれば効果は減殺されます。国際社会がしっかり世論形成しなければいけません。


 こうした制裁とロシアによる対抗措置により、自動車などの輸出産業、また原油・ガス・魚介類などの輸入に与える影響はありますが、影響を受ける事業者に対して迅速に支援措置を講じるよう政府に働きかけていきます。ガソリン元売り業者を通じた1リットルあたりの支給額は3月10日以降17.7円とされました。ガソリン税に関するいわゆるトリガー条項凍結解除についても迅速性に難はありますが検討はされています。


 ウクライナに対しては、資金支援に加え、防弾チョッキやヘルメットをはじめ防衛装備品の提供も実施します。一部野党が軍事支援となるのでないかと懸念を表明していますが、躊躇すべきではありません。


 ゼレンスキー大統領のオンラインによる日本の国会演説も、私がこれまで主張してきた国会のオンライン化で何とか工夫の余地はないか検討すべきです。ロシア国内での反戦活動など表現の自由に対する弾圧を非難することも必要です。

 議論にしっかり加わり、全力を尽くして参ります。

2022年3月1日火曜日

令和4年3月1日

 [試される結束]


 1カ月前の前回のこのブログで懸念を示していたウクライナ情勢ですが、2月24日ついにロシアにより武力侵攻が開始されました。


 プーチン大統領はこれまでの歴史を持ち出して攻撃を正当化していますが、明らかに人道上も国際法上も許されない暴挙であって断固非難します。現時点で既に300人を超えるウクライナ人が犠牲になっており、首都キエフも空爆にさらされています。

 ウクライナはNATO(北大西洋条約機構)の加盟国でないため、欧米諸国は直接ロシアに対して戦闘行為を行っていませんが、人的・物的にウクライナ軍を支援しており、当初軍事力の差からあっさり陥落すると見られていたキエフは善戦しています。


 このような中、日本時間の2月28日夜にロシアとウクライナの代表団による停戦交渉がベラルーシとの国境ゴメリで実施され、双方が結果を持ち帰ったと報じられています。

 ウクライナのゼレンスキー大統領がロシアの主張するNATO非加盟・中立化を容易に承諾するとは考えられず、交渉は長期化する可能性があります。ここで必要なのは、自由主義諸国が結束してロシアの暴挙を許さないという強い姿勢を示し続けることです。


 前回のブログで書いたとおり、今回の事態の推移を中国や北朝鮮は注視しています。現に2月27日、北朝鮮はこのタイミングで日本海に向けて弾道ミサイルを発射しました。中国は台湾の独立を阻止するためロシア同様軍事侵攻するのではないかと懸念されています。今ここで「力による現状変更は決して許されない」ということを日本も含めて自由主義諸国が行動で示し、そうした企てが挫折するしかないことをこれらの国に学ばせなければ、私たちの暮らしも将来危険にさらされかねないのです。


 ロシアは燃料・エネルギー・食糧などの一次産品を多く輸出し、原油価格はこの事態を受けて1バレル100ドル超となっていますが、幸い日本の石油備蓄は国と民間合わせて240日分あります。先月末出演したテレビ朝日の「朝まで生テレビ!」でも議論しましたが、戦争の私たちへの影響を最小限にするための努力が必要です。岸田総理はガソリン税の価格高騰時のトリガー条項凍結解除を含め、あらゆる手段を選択肢に入れて対策を取ると国会でも答弁しています。当面は現在の元売り業者を通じた1リットル5円の補助を大幅拡大したり、貿易保険金の迅速な支払いを行うなどの対処を行います。


 実効性のある制裁措置を実施することも必要です。既に特定個人・団体の査証発給停止、資産凍結、ロシアの軍事関係団体へや半導体などの物資にかかる輸出制限といった措置をとっていますが、ここでSWIFT(国際銀行間通信協会)からロシアの大手銀行を締め出す措置への参加、外貨準備高活用制限などの金融制裁を実施します。

 既にルーブルの暴落と、これに対するロシア中央銀行の主要政策金利の大幅な引き上げなど、様々な効果は出つつあります。問題はこうした制裁の効果を失わせる中国などのロシアに対する支援をいかに食い止めるかで、近日実施されるであろう国連総会などで諸外国の結束を訴えるとともに、私も党の会議などで制裁の穴がなくなるようしっかり主張を続けていく所存です。


 邦人退避につき隣国ポーランドなどを通じて行っていますが、ウクライナの苦しむ方々や欧州への支援も実施する必要があります。結束を保ち、でき得る最大限の措置を講じていかなければいけません。

2022年1月30日日曜日

令和4年1月30日

 [絶望が最大の敵]


 1月27日夜、地元ふじみ野市大井武蔵野の住宅で、92歳の高齢の母を亡くした男が弔問に訪れた在宅クリニック関係者たちに発砲するというショッキングな事件が発生しました。


 犯人は負傷した医師の方を人質として立てこもり、付近は住民が避難するなど騒然。翌日警察が突入して犯人を逮捕しましたが、残念ながら人質のお医者さんは帰らぬ人となってしまいました。亡くなられた方は熱心に地域医療に取り組まれていて人望も厚く、本当に残念でなりません。心よりご冥福をお祈り申し上げます。


 昨日29日、所沢の別の在宅医療機関を訪問したのですが、医師の方が「こんな事件が起きたら在宅医療の担い手がいなくなってしまう」と嘆いておられました。高齢化が進み在宅医療のニーズが高まっている中、コロナ下で医療従事者の負担もピークに達しています。このような身勝手な事件が二度と起きないようにしなければいけません。


 容疑者は高齢の母がいなくなり、介護などに不満を持っていたとのことですが、自分自身66歳で無職。報道によると自殺してクリニックの人たちも殺そうと思っていたと供述しているということです。


 1月15日には、大学入学共通テストの会場である東大前で、高校2年生の男子生徒が受験生3人に切りつける事件も発生しました。こちらも希望する医学部への進学が厳しいと絶望し、自暴自棄になっての犯行だと報道されています。


 銃規制を改めて議論する余地もあるかもしれませんが、こうした自暴自棄になっての犯行をいかに防ぐかがより本質的な課題に思えてなりません。

 絶望しても多くの場合そこから立ち直る道はあります。もし周りとのコミュニケーションがうまく取れていれば悲劇が避けられた可能性は高かったのでないでしょうか。また、自殺の際に他者を巻き込むという身勝手な凶行も、孤独や孤立から他者への思いやりが薄れてしまうのが一因だと感じるのです。


 現代社会において孤独・孤立対策は重要なテーマです。官・民・中央と地方も連携して、しっかり進めていかなければいけません。教育の果たす役割にも注目し、尽力していきます。


[対岸の火事と捉えるな]


 ロシア軍がウクライナ国境付近に集結し、これに対してアメリカが東欧に8500人の派兵の準備に入るなど、現地は緊迫しています。既にウクライナの各国大使館や在留邦人に退避勧告が出される動きとなっています。


 1月24日、党の安全保障調査会で慶応義塾大学の礒崎敦仁教授と東大先端科学技術センター小泉悠専任講師から、国際情勢に関するヒアリングをしました。

 北朝鮮が米国の圧力をかいくぐって人道物資を手に入れながら着々と最新軍備を行い、ミサイル発射を連続して外交カードを手に入れているのは日本にとって脅威です。しかし一方でロシアも、これまで日本が示した対話姿勢には結局応じず、対ヨーロッパの死活的利益として現在親米政権となっているウクライナのクリミア半島確保を真剣に考え、北朝鮮との接近も行っていること、決して見過ごすわけにはいきません。


 もしウクライナで不測の事態が発生してしまった際に、日本がロシアに配慮して経済制裁などにおいて西側諸国とあまりにかけ離れた不干渉の対応を取ると、将来台湾有事の際にアメリカがしっかり対応せず、結果日本に重大な損害が及ぶ危険もあります。

 中国が台頭する中、米国はもはや中東と極東の二正面に軍事展開をする余裕はありません。日本や西側諸国が連携をして安全保障を強化することが急務となっています。


[実態に即したオミクロン対策を]


 昨日1月29日もコロナ感染者は全国で約8万5000人。オミクロン株の急拡大が続いており、病床使用率も11府県で50%を超えました。

 これまでコロナ対策には様々な経験が積み重なっていますが、重症化率が低く感染力が強烈なオミクロン株には新しい発想で対処しないと、社会経済が立ち行かなくなってしまいます。


 まずワクチンの3回目接種を加速化するとともに、エッセンシャルワーカーなど緊急性のある方々がなるべく早く打てるよう尽力すべきです。

 治療薬の確保を急ぎ、専門家の知見を得て感染症分類を5類相当に引き下げるよう努力しなければいけません。


 現在、発熱者と学校での大量の濃厚接触者がコロナ検査を求めて発熱外来のクリニックに電話をし、クリニックも保健所もパンク状態となっているとのことです。まずは早い診断の必要な高熱者・高齢者に検査を提供し、濃厚接触者は症状が出たら検査を実施するという方向を取るべきです。


 また、ほとんどの感染者が若者と子供で、数日で解熱し喉の痛みが残る程度です。こうした方々については発熱があった時点でコロナ感染者とみなして1週間程度の自己隔離を守るようにし、解熱剤を確保すればよく、重症化しそうな方に医療資源を振り向けるようにすればよいのではないでしょうか。


 イベント参加にPCR検査陰性やワクチン接種証明などを求める例もありますが、それが大きな感染拡大をもたらすものでなければ、十分な感染防止対策をとることで置き換えることも考える余地があります。


 極力医療や経済の負担を回避していく工夫をしていきましょう。