[力による侵略を止めるものは]
ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊ブチャにおける市民400人以上の虐殺は世界中に大きな衝撃を与えました。
ロシアはこれはロシア軍が撤退した後のものだとか捏造だとか主張していますが、米紙ニューヨーク・タイムズによる衛星写真や動画の解析によれば、それらはロシア軍撤退前の同軍管理下で行われたとのことです。もしロシアが自らの責任を否定するのであれば、現地調査に協力すべきです。
ブチャ以外の地域でもウクライナ市民の虐殺が報告されており、これは深刻な戦争犯罪と言わざるを得ません。既に日本などがICC(国際刑事裁判所)に提訴していますが、ロシアが同裁判所の管轄に服することを拒否すれば法廷は機能しません。
国連安全保障理事会がロシアに対する制裁措置を決議しようにも、拒否権がある常任理事国であるロシア(またその支援をしているとされる中国)が拒否権を行使すれば、こちらも機能しません。この事態を受けて世界的に、恣意的な拒否権行使を禁ずるなどの安保理改革を求める声が沸き起こっていますが、残念ながらロシアなどが自主的に応じない限りいくら国際世論が圧倒的に改革を求めてもそれは実現しないのです。
つくづく感じるのは、法は強制力を持たない限り絵に描いた餅だということです。
この事態を打開するには、以前もこの欄で書いたとおり、自由主義諸国が結束して「力による現状変更を許さない」というメッセージを、ロシアへのさらなる有志連合による経済制裁、場合によってはウクライナへの人道・軍事支援によって実現するしかないように思います。
これは私たちにも一定のコストと犠牲をもたらすものではありますが、外交による仲介や努力を続けつつも実施する必要があると考えます。それが第二・第三の悲劇を生じないようにさせる唯一の手段だからです。この事態が相当程度長引くことも覚悟しなければいけません。
現在、政府や党ではこの事態を受けた経済対策も真剣に議論されています。また、各種制裁実施のための法改正や、緊急事態対応に向けた憲法改正論議についても、国民にオープンな形で進めていきます。