2022年5月5日木曜日

令和4年5月5日

 [野党に安全保障を託せない決定的な理由]


 2日前の5月3日は憲法記念日。私が会長を務める自民党埼玉県連では、党の憲法改正実現本部事務総長であり、私とともに衆議院憲法審査会の幹事を務めておられる新藤義孝議員を講師として憲法フォーラムを開催しました。

 また、第2部として埼玉政治学院オープン講座と銘打ち、ウクライナ問題で連日尽力されている林芳正外務大臣に、これからの日本の安全外交についてお話ししていただきました。


 関係の皆様への急なご案内でしかも連休真っただ中にもかかわらず、会場一杯の400人近い方々にお越しいただいたことに御礼を申し上げます。私から冒頭の挨拶で、「憲法改正は参院選の重要な争点になる。是非今後県内各地区でも同様の集会を開催して欲しい」と申し上げ、大きな拍手をいただきました。


 施行75周年となる憲法は、民主主義の定着と経済発展に大きな役割を果たしてきたのは事実です。しかし世界がどんどん変わる中で、それに対応できない日本の姿を浮き彫りにしてしまいました。


 新型コロナウイルスの蔓延にあって、迅速な危機管理や国民の権利を一部制限する仕組みが決定的に欠如していることが明らかになりました。東日本大震災の時もそうでしたが、事が起きてから法律を作るのでは間に合わず、しかも議会が一時期開催できないような事態に対応することができません。

 ウクライナ問題では、今なお国益をむき出しにして力による現状変更のために国際法を無視した武力攻撃をする国がすぐ隣にあるという厳然たる事実を目の当たりにし、現在の自衛隊や憲法9条のままでよいのかという疑問を私たちが突き付けられている状態です。


 国民の憲法に関する意識も変わりました。どのメディアでも憲法改正の議論を進めるべきだとの意見が7割を超え、戦後一文字も変わっていない憲法がこのままでよいのか疑問に思う国民がどんどん増えていることがわかります。

 1日に共同通信が実施した世論調査の見出しは「9条改正、賛否が拮抗 改憲気運『高まらず』70%」となっていますが、これは同社の主観の入ったミスリードだと思います。設問には「9条改正の『必要性(括弧は筆者)』があるか」とあり、「9条改正に賛成か」とは問われていません。しかも同じ調査の別項目に「自衛隊の明記に賛成か」という問いがあり、これには賛成が67%と多数を占めているにもかかわらずそのことを記事では紹介していません。さらに、改憲気運が高まっていないとする意見の中では「『どちらかといえば(括弧は筆者)』高まっていない」という意見が70%中7割の48%であり、国民の正確な意思を伝える見出しとしてかなり問題があるでしょう。

 憲法9条改正に反対する団体の支持を受けている野党は、9条のもとでも自衛隊は違憲とされていないと主張します。しかし戦力不保持をうたう同条2項との関係で自衛隊を合憲と解するのは「自衛権は認められている」「必要最小限の実力組織で戦力ではない」など、普通には読めない苦しい解釈を余儀なくされるのであり、現に憲法学者の中にはいまだに自衛隊を違憲と主張する方がいるし、教科書では自衛隊の存在に憲法論争がある旨紹介されています。

 共産党の志位委員長に至っては、綱領で自衛隊は憲法違反だとしながら緊急時には活用すると、自衛隊の方が聞いたら激怒するような理屈を展開しています。しかも防衛力の増強への足かせになったり、日本学術会議が防衛に関する研究を進めることに慎重となる根拠にもなっています。


 特筆すべきは、今回のウクライナ侵攻で、野党が主張してきた「集団的自衛権の容認は憲法違反で許されない」という批判が完全に破綻したことです。

 私たちは、2015年平和安全法制定の際、これまで政府が憲法解釈で認められないとされてきた「他国への攻撃に対しても自衛権を行使する権利」である集団的自衛権を、「自国の存立危機事態」をもたらす場合限定的に認める解釈変更を行い、これに野党は徹底的に反対しました。しかし今回、ロシアがウクライナ侵攻に踏み切ったのは、ウクライナがNATO(北大西洋条約機構)に加盟せず、米国のバイデン大統領が「ウクライナが攻撃されても米国には参戦義務がない」とコメントしたことが決定的な理由となったのです。

 野党は「集団的自衛権を認めると他国の戦争に巻き込まれるおそれがある。個別的自衛権の解釈で十分だ。」と主張しますが、抑止力とは「やったらやり返される」という計算により相手方に攻撃を思いとどまらせる仕組みであり、集団的自衛権のもとでこそこのような抑止力が強化されるという現実を全く無視しているのです。現に今回のウクライナ侵攻以降、これまでNATOに加盟していなかったフィンランドやスウェーデンが相次いで加盟の意思を表明しました。


 野党が「このような危機時に憲法論議を進めようとするのは火事場泥棒のようなものだ」というのも全く的外れです。日本は残念ながら戦後の平和に慣れ切ってしまい、危機が過ぎたらもはや当該危機が再び訪れた際に備えた議論ができない国になってしまいました。2003年、SARS(重症急性呼吸器症候群)が流行して対策が議論された際に取りまとめた方針や法改正は、流行の収束とともに沙汰止みになり、今回のコロナ対応に生かされることはありませんでした(今後法改正のみで足りるのかは先述のとおりですが)。

 日本では有事に適切に対応する議論を行うのは有事にしかできないのであり、これからは教育でそうした弊害を是正していく必要がありますが、当面の対応としては今議論をするしかありません。


 これまで自民党に反対する勢力は、日米安保条約反対、PKO法反対、特定秘密保護法反対、平和安全法反対とありとあらゆる場面で安全保障案件に反対し続けてきました。

 日米安保条約で日本が戦争に巻き込まれる、PKOで自衛隊が海外で戦争できるようになる、特定秘密保護法で自由な報道ができなくなる・・・実態はどうだったでしょうか?

 日米安保が中国・北朝鮮・ロシアなどの防波堤となり、PKOは海外で感謝される貢献を日本が行うことに役立ち、特定秘密保護法で日米当局が機微情報を共有して同盟関係がより強固となっています。今はそれらの立法をした時の国論を2分する大騒動がまるで嘘のようです。


 これまでの経験に基づく結論として、安全保障を野党に任せることはできないと断言できます。(維新については憲法改正は賛成してくれていますが、ロシア問題で首をかしげる発言があります。)防衛問題に造詣の深い議員は続々と野党を離れ、自民党に加わってきています。こうした実態を多くの方々に知っていただく必要があります。