[綱渡りの国際情勢]
米国大統領選挙で民主党のジョー・バイデン候補が当選確実と報じられました。
しかし事前の予測を超えた大接戦になり、トランプ大統領が郵便投票の不当性を訴訟で争う姿勢を見せていることから、最終決着はかなり先になる見通しです。
また、同時に実施されている連邦議会議員選挙では上院が保革伯仲の状況で、仮にバイデン氏が大統領となっても国政運営はこれまでと比べてかなり困難になると見込まれます。
そのような中で、安倍・トランプ蜜月時代と言われた日米関係にどのような影響があるのか、しっかり見極める必要があります。
これまでのような自国第一主義、人権や環境の軽視が改められると期待する意見があります。私は自民党再生可能エネルギー普及拡大議員連盟の会長ですし、菅総理もこの度わが国の2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を実質ゼロにすること)を目標と打ち出したことから、そのこと自体は歓迎です。また、これまで米国抜きで進んで来たTPP11の交渉に変化が生じることも考えられ、今進んでいる日英経済連携協定と合わせてアジア太平洋地域に巨大な自由経済圏が誕生することで、コロナ禍の世界経済にもプラスになると予想されます。
しかし、対中政策・対北朝鮮政策、厳しさが依然続く中東情勢がどうなるかは不透明です。急速に進む中国の発展と東南アジアにおける安全保障における脅威の増大、北朝鮮が進めるミサイル開発に対し、毅然とした姿勢を保てるのか、また、5G・6Gなど情報通信技術も含め、自由で開かれた世界経済の担保をしっかり取ることができるのか、きちんと見極める必要があります。
バイデン氏は民主党の中では中道派と言われ、先述したように連邦議会上院が保革伯仲であることからすれば急速な親中政策への展開はないようにも思われますが、今後日本における安全保障政策の独自の強化や、共和党も含め様々なチャンネルの動員による日本国益の主張を行う必要があるでしょう。
そのような中で日本学術会議をめぐる野党の姿勢は理解に苦しみます。
私がテレビ番組で話したとおり、同会議は1950年に軍事研究をしないと宣言したことを盾に、現在諸外国で急速に進むデュアルユース(軍民両用技術)の研究活動に極めて慎重です。また、会員の選任について事実上後継指名が行われるような閉鎖性も指摘されており、特別公務員かつ政府の科学技術にマスタープラン策定などで大きな影響をもたらす同会議の会員選任について、政府に一切の関与が認められないというのは明らかに不合理です。
今回の政府による一部指名の見送りは全体の6%弱であり、しかも候補以外の学者を指名しているわけでもありません。法解釈上もかつての枠を超えていませんし、研究者の(発表の自由を含め)学問の自由に反するとの指摘も当たらないと考えられます。今回の人事については問題はないと思います。
世界各国の王立アカデミーなどは政府から独立した立場でより積極的な活動をしており、日本学術会議の完全民営化も含め、同会議の意見も踏まえて今後のあり方を検討していきます。
[都構想否決後の大都市行政]
大阪都構想を決める住民投票は僅差の結果で否決となりました。この結果を重く受け止め、地域の安定が今後進むことを期待します。
しかし、今回の投票がこれからの大都市行政に投じた一石は大きいと思います。今回のコロナ禍における対策実施では、保健所の管轄の混乱や国と自治体の連携不十分などによる混乱が生じました。地方も含めたガバナンスをどう改革していくのか、しっかり議論していくべきだと思います。