[さらなる体制整備を]
東京五輪は日本勢が空前の金メダル27個をはじめ、大いに活躍した大会となりました。一方、先週政府が示したコロナの重症患者やリスクの高い人を除いて自宅療養を基本とする方針については、世論は厳しい反応を示しています。
4日、党本部で開催された新型コロナウイルス感染症対策本部の会議でも異論が続出。私も「中等症であっても家族感染リスクが高く、緊急搬送体制が不十分であることを考えれば、空きが出ている宿泊施設の活用をもっと進めるべきだ」と訴えました。
デルタ株の強い感染力を考えれば、40代や50代のワクチン接種が十分でない段階ではいかに部屋や食器を分けても確実に家族感染は広がり、しかも感染者の世話をすべき他の家族が倒れることにより重症化のリスクは格段に広がります。
医師・看護師の機動的な対応や、複数の抗体を混ぜて利用するカクテル療法など先進的な取組みを生かすためにも、現在移動自粛により空室が目立つ宿泊施設をもっと積極的に活用して患者を家族から隔離するとともに、施設の空き部屋情報の公開や感染者受入れの際の補償の上積みを図るべきです。東京では受け入れ可能なのは3000室弱だと言いますが、倍以上の活用ができるはずです。
また、やむなく自宅療養をする場合であっても、陽性者へのパルスオキシメーター(酸素飽和度測定器)への配布、健康観察を担う看護師や相談窓口の充実を行うとともに、重症化マニュアルの詳細化やオンライン診療の充実などにより、容態急変時に速やかに搬送できるような体制を整えなくてはいけません。現状、24時間体制で往診できる診療所は全体の1割強で、オンライン診療に対応できる診療所や病院も全体の15パーセントと言われていますが、これではとても足りません。また、昨年来強化が叫ばれている保健所の体制・通信環境の充実も待ったなしです。
何より、人口当たりの病床数は世界一と言われながら、小規模病院が多く、専門人材もECMO(体外式膜型人工肺)などの治療機器も不十分な日本の医療提供体制のさらなる充実が不可欠であり、それには国のみならず自治体や医療従事者の方々のご尽力が必要になってきます。
昨年来叫ばれてきた重症病床確保については国の1床あたり1950万円の補助金により1000床余り上積みされましたし、今年初め改正された感染症法は都道府県知事による病床確保の要請や勧告の権限が強化されましたが、大規模病院への集約化や県をまたぐ搬送への対応が不十分なため、有効に活用できていないとの指摘があります。広域医療計画を関係機関の関与のもと改正し、また軽症化した患者を速やかに大病院から引き取らせるルールも定めて欲しいと思います。
[ワクチンにおける前進]
この欄で触れているワクチンの充実については、8月9日までに総接種回数が1億回を突破しました。また、8月16日からアストラゼネカ製5万2800回分を、緊急事態宣言発令中の6都府県に供給すると国から発表されました。ファイザー製ワクチンについても7~9月までの供給量を600万回増やすことが決定したとのことです。
各自治体には9月までのワクチン供給量の見込みが提示され、これで供給の目処が立たず一時停滞したワクチン接種が安定的なペースで再開されると期待されます。また、自治体側には現在2000万回以上のファイザー製ワクチンの在庫があり、それを配分調整すれば相当接種速度のバラつきがなくなってくると思います。
もっとも、対象年齢12歳以上の希望接種完了は10月から11月とされていますが、若い世代には、コロナの重症化度合が少なく、一方副反応が大きいと言われるワクチン接種がどれだけ進むかが懸念されており、また重症化リスクの大きい40代から50代にかけてはもっと集中的にワクチンを打たないと今の感染急拡大に追いつきません。
秋口に在庫が増えるような事態になれば、感染力拡大とワクチンの効力維持効果も見極めつつ、3回目接種について検討を進めていくよう政府に働きかけていく所存です。