2020年5月4日月曜日

令和2年5月4日

[アフターコロナの前にウィズコロナ戦略を]

 対象地域が日本全国となった緊急事態宣言は、5月末まで延長される見通しとなりました。

 世界の感染者は、米国の110万人超を筆頭に実に344万人以上に達しています。死者は24万人を超え、先月のこの欄を見ても短期間の間に恐ろしい感染爆発が生じていることがわかります。

 4月29日に出演したインターネット番組で申し上げたとおり、日本はこの間、かろうじて感染爆発を抑えてきた感があるものの、諸外国に比べて低い検査率、陽性率が初期より上がっていることなどを考えると、感染者数は公式発表よりかなり多く、それが自宅待機中に亡くなるなどの事例の増加につながっていると感じます。

 PCR検査の拡大が目標に比べてなかなか進んでこなかったのは、専門性のある検査体制が整っていなかったことと医療崩壊を恐れていたことが理由とされています。
 医師会のご協力により、地域外来・検査センターが設けられ、PCR検査体制が増強される動きが各地で広がっています。国からも助成や防護服の確保などのバックアップをしっかり進めます。
 また、PCR検査判明まで患者が待機したり、これまで自宅療養とされてきた軽中度症状の方々が入所したりするための宿泊施設の借上げを加速します。国からもようやく自宅待機より施設入所が優先されるとの方針発表がありましたが、私も自民党埼玉県連会長として、3月末に診療を終了したさいたま市立病院の旧病棟の活用を県に訴えかけ、現在手続が進んでいます。

 また、上記番組では、さらに感染者数が少ないからといって一部地域を除外するとそこに人が移動してしまうとの懸念を示しました。全国一律の規制をすべきと主張したわけではなく、地域に応じた規制を持続可能な形でかけていくという趣旨です。学校の再開の方法などもまさに地域の実情に応じて判断されるべきと考えており、文科省には的確な判断基準を示して欲しいと考えています。

 そのような中で浮上してきたのが「9月入学問題」です。

 これ以上学校の再開が遅くなるようだと、むしろ9月を入学・始業の時期と後ろ倒しすべきだという考え方で、知事会や一部有識者から主張されました。

 私自身は世界で例の多い9月入学を採用することは留学促進の観点からも悪いことではないと思っていますが、事はそう簡単ではありません。

 まず、自治体自身が会計年度も採用も4月からとしており、多くの民間企業も同じです。それを変える覚悟と国民的理解が得られるかです。
 保育園・幼稚園は卒園を半年遅らせると負担が増え、医療系の学生が社会に出るのが半年遅れることが現場でどのような影響をもたらすかの問題もあります。必要な法改正も多岐にわたります。
 何よりも現在、在宅でもオンライン学習を拡大するなど、GIGAスクール構想をはじめとした学びの質の向上をスピードアップする動きがこれで頓挫するのでないかという懸念があります。
 学校の再開がさらに遅れた場合はどうするのか、一年遅れたらまた元どおりとなるのでしょうか。

 かつて9月入学は何度も議論されてきましたが、日本に根付いた社会・経済の壁に阻まれてきました。今回の9月入学が、改革推進でなく改革後退の便法とならないことを切に願います。また、私も党であるべき検討を働きかけていきます。

 学校の問題でいえば、家計急変やアルバイト収入が途絶えた学生の窮状をどう救うかも極めて重要です。
 文科省は授業料延納・減免を各大学に働きかけるとともに、私が大臣時代に制度化したこの4月から始まる高等教育無償化策を、家計急変学生や在学生にも広げる方針を示しています。また、各大学独自の奨学金についても家計急変学生について国がバックアップする方針を示しています。
 自民党はこれに加えて、学生の家賃の問題解決や学校間格差是正、雇用調整助成金や小口融資など他の制度の周知も萩生田大臣に働きかけました。

 前回のこの欄で紹介した経済対策は、所得減少家庭への30万円の給付が閣議決定後に全国民一律10万円の支給と変更になりました。経済・社会の状況変化や、与党内調整などでこうした方針転換が生じたことは理解できます。しかし対象者が一気に増えたからといって支給が遅れては何の意味もありません。マイナンバーカードを活用したオンライン申請の普及や、必要書類・押印の削減など、効率化を徹底して欲しいと思います。

 これに限らず、雇用調整助成金の支給やつなぎ融資などをスピードアップするための具体的な改革に取り組みます。
 また、これまでは「収束までは自粛」「アフターコロナはV字回復」の経済対策を想定して来ましたが、これからは「きめ細かなウィズコロナの経済・社会戦略」を立案しないと、社会が疲弊してしまうと思います。テレワークやオンライン診療の普及、株主総会オンライン化、テイクアウトの普及などは検討されてきましたが、さらなるICT社会の推進や、都市集中モデルから地方分散モデルの社会、事業再編の促進など、省庁横断で政府に司令塔を作って検討していく必要があります。今の有識者会議はどちらかというと感染症の専門家が中心でしたが、これからは経済や危機管理の専門家もしっかり議論に加わってもらわなければいけません。

 昨日は憲法記念日でした。前回のこの欄で述べたとおり、緊急事態にどこまで私権の制限ができるのか、定足数緩和など国会の機能確保の必要がないのか、議論することは山積しているにもかかわらず、一部野党が憲法審査会の幹事会にすら出席しないという事態は大変問題だと思います。今は与党も野党も国難の克服のために全力を尽くすべきです。